2022年度 入学式・第1回授業

<入学式>

 2022年度の入学式が6月12日、横浜市立大学金沢八景キャンパスのカメリアホールで行われました。開校8年目の今年は、横浜市内外48の小学校から4年生27人、5年生31人、6年生35人の計93人が入学。この日は、81人が出席しました。

 式では、大年美津子理事長が、「みなさんはいつもは小学生ですが、今この場では大学生です。通常は小学校から中学、高校と段階を踏んで大学生になるわけですが、この子ども大学で少し先回りして、大学とはどんなところなのかを少しでも理解できるようになるといいなと思います」と新入生を歓迎。続いて榊原洋一学長が、「皆さんが通う小学校では、もうすでに知っていること、わかっていることを学びます。大学は、それに加えて、まだ誰も知らないことを勉強し研究します。自ら進んでこの大学に集まったみなさんには、想像力と探求力を身につけて未知の課題を解決し未来の世界を創る人になってほしい」と激励しました。

 今年度は来年2月まで、薬の作用や中華街の歴史などについて学ぶ計5回の授業が予定されています。                

第1回授業 「国際医療協力のおはなし」

6月12日(日)14:30~16:30  横浜市立大学カメリアホール(横浜市金沢区)

講師:子ども大学よこはま 学長 榊原 洋一先生

 (チャイルドリサーチネット所長、お茶の水女子大学名誉教授、日本子ども学会理事長、医学博士)

受講者:81人(4年生27人、5年生25人、6年生29人)

 

 2022年度の幕開けの授業は、学長の榊原洋一先生による「国際医療協力のおはなし」。パキスタンやネパール、ガーナなど、先生が実際に医療協力で訪れた国々の医療の実情を写真やエピソードを振り返りながら学び、本当の国際協力のためにどんな支援が必要なのかについて考えました。

 先生の講義の概要を以下に紹介します。

 

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 世界にはいろいろな国があります。医療をとってみても、国によってはお医者さんがいるがその数が少ないとか、薬や医療機器が十分でないとか、国ごとに事情があってみな同じではありません。この日本は世界で一番恵まれている国です。

 

――乳児死亡率でみる世界の医療

 日本の乳児死亡率(出生数1千人当たりの生後1年未満の死亡数)の推移をみてみます。1899年のデータですが、最初は150人ぐらい。生まれた赤ちゃん1千人のうち150人が1歳の誕生日を迎える前に亡くなったということです。1919年はスペイン風邪の流行で200人近くに上りました。それが、だんだん衛生状態がよくなり医療技術の進歩もあって減少し、今ではほとんどゼロに近づいています。生後4週間までの新生児死亡率は2017年で0.9人です。

 それでは他の国はどうかというと、日本の0.9人に対し、韓国は1.5、アメリカは3.7、中国は5.1です。もっと見ると、ネパールは58、アンゴラは131、アフガニスタンに至っては143という日本の明治維新のころとほぼ同じ数値です。

 なぜこんなに違いがあるかというと、アフガニスタンは長い内戦があり、病院も医師も少ないのです。交通機関もないので、病院に着くまで命がもたないということもあります。アメリカも結構数値が高くなっていますが、これには全人口2.5億人のうち2千万人が医療保険に加入していないという事情があります。医療費が払えず、病院にかかれないのです。アフリカの国々でも医師はちゃんと勉強していますが、数は圧倒的に少ない。

 医学の知識は世界中同じなのですが、このようにさまざまな事情で医療を受けられない人がまだまだたくさん世界にはいるのです。国際医療協力はこうした現実を踏まえて、世界中のだれもが医療の恩恵に与(あずか)れるようにしよう、そのためにみんなで助け合おう、ということなのです。